各国は外国人の受け入れと社会統合をどう設計しているか。政府・公的機関の一次ソースに紐づけて構造化し、 日本の制度を考えるための比較の参照点として提供する、実務者向けの調査基盤です。
どの国がどんな受け入れ方をしているかを、1枚の見取り図で俯瞰します。
政策・参加・言語・統計など7つのテーマで、各国の制度を横断して比較します。
比較から見えてくる、日本がこれから判断する設計上の選択肢を整理します。
このページは各国制度を構造化したブリーフです。日々の海外ニュース・記事はナレッジベースの「海外」カテゴリ、 日本側の統計・実証資料は政策エビデンス・ライブラリにあります。
この図は、各国の受け入れ方を大まかに4つの型に分けて見るための補助線です。 正確な分類ではなく、国別ブリーフを読む前の方向づけとして使ってください。 2つの軸は ①誰を受け入れるか(技能で選ぶ ↕ 人道・家族で受け入れる)と②受入後どう扱うか(同化を求める ↔ 多文化を認める)。
技能で選んで受け入れる ↑
選別 × 同化
技能で選び、受入後は同化を求める
選別 × 多文化
ポイント制で選びつつ多文化を公認(加・豪)
人道 × 同化
家族・人道中心で受け入れ、共和国モデルへ同化(仏)
人道 × 多文化
広く受け入れ、多文化を尊重(瑞)
↓ 人道・家族を中心に受け入れる
なぜ日本をこの図に置かないか
日本は文化モデルを国として明示せず、技能実習→特定技能・育成就労で「選別」寄りに見える一方、定住・市民権には開いていません。 どの型にも当てはめにくく、その当てはめにくさ自体が論点のため、あえて座標に置いていません。 日本の現行制度と論点は STEP3「日本の現在地と論点」で扱います。
※ 配置の基準時点:各国制度の基準時点は国により異なります(2020年〜2026年、詳細は各国データの更新日を参照)。統合度の操作化は MIPEX 2020 / Koopmans の文化的権利比較を参照。 位置は相対的な目安で、制度改正により動きます(仏・スウェーデンなど近年は選別強化の方向)。 丸をクリックすると詳細版のある国は国別ページへ移動します。
参照した学術枠
Castles & Miller『The Age of Migration』 — 国家の統合モデルを「差別的排除/同化/多文化」の3類型で整理。本マップの軸の土台
Brubaker(仏独の市民権比較) — 仏=領土・市民型(jus soli)、独=血統型(jus sanguinis)。なぜ仏独が違うかの説明
Koopmans(文化的権利指数) — 同化的〜多文化的を実証スコア化。横軸の操作化の参考
見取り図で気になった国を、テーマごとに深く読み解きます。下のタブは社会統合政策・参加制度・統合の測り方・言語・移民統計・経済統計・治安統計の7テーマ。 各カードには制度の要点・日本への示唆・一次ソースを付け、詳細版のある国は個別ページへ進めます。
CIR(共和国統合契約)+ 2024年移民法・2026年施行
日本への示唆
同化主義モデルの典型。「統合を在留資格の条件にする」設計は日本の今後の論点。ただし2世の社会的分断という副作用も併せて参照すべき。
市民統合(inburgering)Wi2021 — 統合B1・帰化A2の二層
日本への示唆
統合(B1)と帰化(A2)で要件水準が異なる二層構造は、「どの到達をどの段階に課すか」を明示する重要さを示す。自治体が個別計画を主導する点は自治体主導の日本に近く参照しやすい。
Integrationskurse + 連邦・州・自治体の多層ガバナンス
日本への示唆
「州主導」は実施・受入レベルの話で、コース概念と資金は連邦。日本の自治体任せの共生施策に対し、国の枠組み+自治体実施の役割分担モデルとして最重要。断片化の弊害も教訓。
統合(KoLL)要件と分権的なコミュニティ統合戦略
日本への示唆
「統合」を在留の入口でなく定住・国籍の段階で課し、コミュニティ統合は自治体・地域に委ねる分権型。語学要件を在留更新ごとに課す仏型と対照的で、日本が「どの段階で何を求めるか」を考える比較軸。
KIIP(社会統合プログラム)— 2025年 有料化改革
日本への示唆
「統合プログラム修了=在留優遇」のインセンティブ設計は、語学と在留資格の本格接続が途上の日本(特定技能・育成就労で一部開始)への直接的な制度比較軸。
National Integration Council(NIC)+ Community Integration Fund
日本への示唆
「職場統合」を国家プログラムとして基金化する発想は、企業任せになりがちな日本の受入実務への示唆。CIFは助成スキーム設計の参照に。
SFI・定着プログラムと市民権要件の厳格化(2026〜)
日本への示唆
「コミューンが語学、国の職業安定所が労働市場定着」の担い手分担は日本に近い構図で参照しやすい。長く寛容とされた国でも市民権を言語・社会知識に接続する転換が起きており、「要件化」は普遍的論点。
ポイント制と多文化主義・定着支援(AMEP)
日本への示唆
州・準州の指名で地域の労働需要に合わせる仕組みとAMEP(無料英語)が定着支援の柱。受入急増→抑制という規模管理の課題はカナダと共通で、日本の技能移民の選別・定着設計に直接の参照。
公式多文化主義と移民選定・定着支援(ポイント制+永住前提)
日本への示唆
「管理された受入(ポイント制)+永住前提+定着支援」の最も体系的な参照。連邦+州(PNP)+ケベック特例の分担は国と自治体の役割設計に示唆。語学基準はCEFRでなくCLB(独自体系)である点に注意。
Action Plan on Integration and Inclusion 2021–2027
日本への示唆
受入社会の変容を政策目標に含める構成は、外国人の適応中心になりがちな日本の共生計画への対比軸。
欧州・韓国は「語学と市民知識の修了を在留資格や帰化の条件にする」方向で足並みをそろえつつある。一方ドイツは早期帰化(3年)を5年へ戻すなど、一部で揺り戻しも起きている。(一覧最終確認: 2026年7月)
これから(検討中・未確定)
各国がこう動くなかで、日本はどこにいるか。海外比較は「日本に何もない」前提ではありません。 まず既にある制度を押さえ、その上で各国比較から見えてくる設計上の論点を置きます。
| 領域 | 日本の現行制度 | 主な所管 |
|---|---|---|
| 在留資格・受入 | 特定技能1号/2号、技能実習は育成就労へ移行(2027年4月1日施行) | 出入国在留管理庁 |
| 共生の全体方針 | 外国人との共生社会実現に向けたロードマップ(2022年策定・2024年改訂) | 出入国在留管理庁・関係省庁 |
| 地域の多文化共生 | 多文化共生推進プラン(2006策定/2020改訂) | 総務省 |
| 日本語教育 | 日本語教育推進法(2019)/日本語教育の参照枠(2021)/地域日本語教育 | 文化庁・文部科学省 |
| 相談・窓口 | 一元的相談窓口(FRESC 等)の整備 | 出入国在留管理庁・自治体 |
各国の経験から得られる示唆
「外国人/移民/2世」を国籍と切り離し永続カテゴリーで定義
日本は在留外国人しか数えず、帰化者・2世を見失う。統合の効果測定には仏型の定義整備が前提
同化主義+ライシテ。統合を在留資格の条件化(2026〜)
強い統一規範の一方で2世の分断・差別が課題。「条件化」の是非は日本でも論点化する
連邦=枠組み/資金、州=実施、自治体=現場。役割分担を法定
日本の共生は自治体任せで断片化リスク。国の枠組み+自治体実施の分担設計が参考に
統合プログラム修了を在留・帰化と接続しインセンティブ化
語学と在留資格の本格接続が途上の日本(特定技能・育成就労で一部開始)にとって最も近いアジアの先行事例
職場統合を国家プログラム化し基金で企業を支援
企業任せになりがちな日本の受入実務に、助成スキームの設計図を提供
海外比較で照らし出される、日本の論点
※ いずれも「不足」の断定ではなく、これから判断する設計上の選択肢です。
日本側の統計・実証・実務資料を見る(政策エビデンス・ライブラリ) →どの国の制度にも一長一短があります。POLARISは正解を押し付けません。各国を横断して見えた「設計上の分岐点」を示し、 人権・民主主義・法の支配・政教分離という基本価値に照らした補助線を添えます。
海外の対照
仏・独・韓は修了や到達を在留・帰化に接続。加・豪は入口(ポイント制)で選別し定着は公的支援。日本は特定技能・育成就労で一部接続が始まった段階。
POLARISの補助線
条件化は学習を促す半面、満たせない層の排除を生みうる。手続的公正と救済(再受験・配慮・費用補助)を同時に設計できるかが分かれ目。
海外の対照
仏は同化+ライシテ、加・豪は多文化主義を法定化。独は「移民国」承認後も明示は抑制的。日本は国としての明示的選択をしていない。
POLARISの補助線
どのモデルでも差別の禁止と社会参加の保障が共通の前提。モデルの呼称より、非差別・参加が実際に担保されるかを基準に置く。
海外の対照
独は連邦が枠組み・資金、州・自治体が実施という多層分担。韓は国が全国均一に運営。日本は実施が自治体任せになりがち。
POLARISの補助線
「誰が標準を決め、誰が現場を担い、誰が払うか」を曖昧にしないこと。当事者の参加を制度に組み込めるかが民主的正統性を左右する。
海外の対照
加・豪は公的な定着支援+計画的な規模調整(近年は削減)。日本は定着費用が企業・自治体に偏りがち。
POLARISの補助線
規模拡大の前に定着の担い手と財源を決める。費用を現場に押し付ける設計は、結局は排除と分断のコストとして跳ね返る。
海外の対照
仏INSEEは「移民」を出生地・国籍で定義し2世まで継続把握。MIPEX等の国際比較も定義を明示。日本は帰化者・2世の捕捉が弱い。
POLARISの補助線
測れないものは改善できない。定義を明示し、属性別の格差を可視化することは差別是正の前提条件。
参考:日本の立ち位置 — MIPEX 2020
移民統合政策指数相対的に強い領域
労働市場アクセス・保健・医療・永住へのアクセス
相対的に弱い領域
反差別(包括的な差別禁止法の不在)・政治参加・教育
MIPEX 2020で日本の総合は100点中47(56か国の中位群「一時的統合」)。特に反差別・政治参加の領域が国際的に低い。スコアは政策の「枠組み」評価であり、現場の運用の良し悪しを直接示すものではない点に注意。
出典: MIPEX — Japan →用語集
CEFR ヨーロッパ言語共通参照枠
A1〜C2の6段階で言語運用能力を示す国際指標。多くの国が統合・永住・帰化の語学要件に用いる。日本の「日本語教育の参照枠」(2021)も影響を受けている。
MIPEX 移民統合政策指数
各国の統合政策の「枠組み」を8分野で採点する国際比較指標(最新は2020年版)。政策の建付けの比較に使い、現場運用の良し悪しを直接は示さない。
デニズン denizen
市民権を持たないが定住し一定の権利を享受する外国人。政治学者トマス・ハンマーの概念。
同化主義 assimilation
移民が受入社会の言語・文化に同化することを統合とみなす考え方。フランスが代表例。
多文化主義 multiculturalism
出自の文化的多様性を公的に承認・尊重する政策の立場。カナダ・オーストラリアが代表例。
差別的排除 guestworker型
労働力としては受け入れるが定住・市民権を制限するモデル(Castles & Miller の分類)。
ライシテ laïcité
フランスの政教分離原則。公的空間での宗教的中立を重視する。
一次ソース・レジストリ 各国政府・公的機関の公式ポータル