国の施策体系と多文化共生推進プラン
国の多文化共生施策は3つの主要文書で構成されている。
【外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策】(関係閣僚会議決定): 全府省庁にまたがる施策パッケージ。毎年改訂される。法務省(出入国在留管理庁)が事務局を務める。
【外国人との共生社会の実現に向けたロードマップ】(2022年策定、2024年改訂): 中期的な施策の方向性と工程表。同じく関係閣僚会議で決定。
【地域における多文化共生推進プラン】(総務省): 自治体に対して多文化共生施策の推進を求める通知文書。初版2006年、2020年9月に改訂。自治体が計画・指針を策定する際の基本枠組みとなっている。
改訂版のプランでは、(1) コミュニケーション支援、(2) 生活支援、(3) 意識啓発と社会参画支援、(4) 地域活性化の推進とグローバル化への対応、の4つの柱が示されている。
自治体における計画策定の現状
全47都道府県は何らかの形で多文化共生に関する計画・指針を策定している。名称は「多文化共生推進計画」「国際化推進計画」など様々だが、外国人住民に対する施策の方向性を体系的に示す文書として位置づけられている。
市区町村レベルでは対応に大きな差がある。総務省が2024年に実施した「多文化共生推進状況等調査」(全1,741市区町村対象)によると、人口規模が大きい自治体ほど取り組み項目数が多い傾向にある。一方、同程度の人口規模でも取り組み50項目の自治体と0項目の自治体があり、ばらつきが大きい。
近年は区レベルでの策定も見られる。2024年5月には横浜市鶴見区が市内の区として初めて「多文化共生基本指針」を策定した。外国人住民比率が高い地域では、より細かい行政単位での計画策定が求められている。
計画に含まれる主な施策領域
【情報提供・コミュニケーション支援】行政情報の多言語化、やさしい日本語の活用、通訳・翻訳の体制整備、地域日本語教室の運営支援。総務省調査ではホームページの多言語化(71.6%の市区町村が実施)が最も普及しているが、多言語発信ガイドラインの策定は4.4%にとどまる。
【生活支援】外国人相談窓口の設置・運営、医療通訳の確保、外国人の子どもの教育支援(日本語指導・母語支援)、住居確保の支援。
【社会参画】外国人住民会議の設置、自治会・地域活動への参画促進、災害時の共助体制づくり。
【意識啓発】地域住民向けの多文化共生研修、外国人住民との交流イベント、差別・偏見の解消に向けた取り組み。
策定プロセスと実効性
多文化共生計画の策定は一般的に以下のプロセスで行われる。
・現状分析(外国人住民の統計・ニーズ調査)
・課題の整理
・施策体系の設計
・数値目標(KPI)の設定
・パブリックコメント
・策定・公表
計画期間は5年間が多い。
実効性の確保が課題として指摘されている。多くの計画に数値目標があるが、達成状況を定期的に検証しPDCAを回す体制が十分でない自治体がある。多文化共生は複数の部署(国際課・福祉課・教育委員会・防災課等)にまたがるテーマであり、庁内横断的な推進体制の構築が求められる。
多文化共生施策の財源として、総務省の特別交付税措置(多文化共生推進事業)の活用も検討対象となる。
計画策定時の外国人住民の参画も重要である。「外国人住民会議」や「推進委員会」に外国人住民を委員として参画させる自治体が増えているが、言語の壁や委員の選出方法に工夫が必要である。
POLARISの活用
POLARISの都道府県ページでは、各都道府県の多文化共生推進計画・指針のPDFリンクを集約しています。自県の計画と近隣県を比較参照する際にご活用ください。在留外国人統計(国籍構成・在留資格構成)との組み合わせにより、計画の前提となるデータも確認できます。
施策設計の段階では、Logic Model Studioを活用して施策の論理構造を整理し、交付金申請書や議会説明資料の作成にお役立ていただけます。
一般財団法人自治体国際化協会(CLAIR、1988年設立)のWebサイトでは、全国の自治体が策定した多文化共生プランの一覧が公開されています。他自治体の事例を参照する際に有用です。